NHKスペシャル 寝たきりからの復活〜密着!驚異の“再生医療”〜

『NHKスペシャル』(エヌエイチケイスペシャル)は、NHKのドキュメンタリー番組。略称は「Nスペ」。単発のドキュメンタリーを制作・放送していたNHK特集に代わり、1989年4月2日放送開始。原則、毎週日曜日の21:00 - 21:50に放送するが時間枠を拡大したり他の曜日・時間に放送することもある。再放送は、火曜・水曜深夜。多くはハイビジョン放送である。本項では前身である『NHK特集』(エヌエイチケイとくしゅう)についても記述する。

出典:goo Wikipedia

放送日 2019年5月4日(土) 21:00~21:50
放送局 NHK総合

番組概要

オープニング (その他)
21:00~

オープニング映像。

事故で重傷を負い寝たきりになった男性は脊髄損傷で回復は難しいと告げられていた。ところが一週間後、ある最新の治療によって立ち上がってあるき始めた。今では、自分で車の運転もできる。男性が受けたのは再生医療と呼ばれるもの。治療ではある特別な能力を持つ細胞を患者の体に入れる。その能力とは、様々な細胞にいわば変身をして人体を再生させるというもの。この再生医療は5月から健康保険が適用され、誰もが受けられるものとなった。これによって脳卒中なども再生医療によって克服できる可能性が見えてきている。医療イノベーション推進センターの福島雅典センター長は「天動説から地動説に変わったくらいの大きい変化」などと語る。

キーワード
脊髄損傷
再生医療
健康保険
脳卒中
肝硬変
認知症
医療イノベーション推進センター
福島雅典センター長

寝たきりからの復活 (ニュース)
21:02~

北海道の札幌医科大学。重傷の患者たちが全国から運び込まれている。取材を始めたのは2016年。遠く三重県から搬送されてきた男性は事故で首に瀕死の重傷を負っていた。自力で呼吸も出来ず、人工呼吸器がかろうじて命をつないでいた。手足は完全に麻痺していた。男性の妻は、完全に感覚を失った夫の手を祈るようにさすり続けていた。結婚して40年、事故は突然のことだった。2016年6月、建設現場で働く男性は前日の雨で車体が濡れていたが、いつものように重機を点検していた。手を滑らせて地面に落下した。事故にあった男性の首の脊髄が損傷していた。脊髄には脳からの司令を全身に伝える重要な神経が走っていて、これが傷つくと様々な麻痺が起きる。特に首の部分を損傷するとそこから下の全身に脳の司令が伝わらなくなる。一命はとりとめたものの医師からは一生寝たきりになる覚悟を突きつけられた。そんなとき男性の娘が見つけたのは札幌医科大学で行っていた再生医療の治験だった。治験とは、国が定めたルールにしたがって新しい治療法の効果と安全性を確かめるもの。札幌医科大学ではいよいよ脊髄損傷の患者で治験を行う段階に至っていた。成果が現れる保証はないがそれでも男性は最後の望みをかけて治験に参加した。

脊髄損傷の原因の多くは誰にでも起こりうる事故。酔っ払ってころんだ程度でも打ち所が悪ければ、起こる。脊髄損傷に陥る人は毎年およそ5千人。治療は困難で多くの人が車椅子や寝たきりの生活を余儀なくされている。

再生医療は脊髄損傷などの悲劇から患者を救う希望の光。札幌医科大学の山下俊彦教授は「スポーツとか交通事故である一瞬から完全に世界が変わってしまう、でもやはりもう一度あるきたい戻りたいと非常に強く思っておられるんでそれを回復させてあげるというのが大きい治療だと思っている」と語る。再生医療と聞くと、まず思い浮かぶのが山中伸弥さんのiPS細胞かもしれない。受精卵のように何にでも変身できる細胞を人工的に作り出したのがiPS細胞。一方、iPS細胞と同じような変身能力を持つ細胞が人体にも存在している。それが幹細胞で、その一つの間葉系幹細胞は、死亡や血管などいくつかの細胞に変身できる能力を持っている。まずは体に麻痺のある脳梗塞の患者で試験的な治療を始めた。麻痺の原因は脳の神経細胞の一部が死んでしまっていることにある。まず患者の腰の骨から骨髄液を抜き取り、その中に僅かに含まれる間葉系幹細胞を2週間掛けて培養し1万倍に増やし、これを点滴で再び患者の血液中に戻すと、幹細胞が幹部にたどり着き新しい神経細胞に変身し脳を再生してくれるのではと期待した。実際に脳梗塞の患者に投与すると、驚きの変化が現れた。投与から3週間後には歩くのもままならなかった男性が真っ直ぐ歩けるように急速な回復を遂げた。間葉系幹細胞はまさに、自己治癒力を呼び覚ますような特別な細胞だと研究チームは考えている。さらに今回、新たに挑んだのが脊髄損傷を間葉系幹細胞で治そうという治験。

2016年8月。事故で脊髄損傷を損傷した男性は完全麻痺に陥って54日が経過していた。この日いよいよ、培養した間葉系幹細胞が点滴で体に戻されることになった。1億個にまで増やされた幹細胞が男性の血液中に入っていく。幹細胞の投与は1回だけ。幹細胞の投与から1週間後。見た目に変化は感じられない。理学療法士が寝たきりの男性をベッドに座らせ、人工呼吸器を外した。自力で呼吸できるようになっているか確かめようという。呼吸する力が戻り始めている様子。

今回、再生札幌の治験を受けた人は13人。劇的な回復を遂げた人の一人、脊髄損傷患者の草地伸治さん(51)は、寝たきりだったのが今では自由に車を運転できる。草地さんは、怪我する前の感覚とあまり変わっていないという。杖なしで歩くこともできる。ここまで回復できるとは夢にも思っていなかった。脊髄をsん称して間もない草地さんは手足が麻痺して自分で体を起こすことが出来なかった。草地さんは飛込競技で地方の大会で優勝するほどの腕前で、この日は特に難しい技を練習していて、「(プールの底に)頭からいった」といい「一瞬の出来事で手足が動かないんですよ、全く」などと振り返った。草地さんの運動機能を見ると、事故から3週間で自然の回復が起き、それからは横ばいのまま。普通、脊髄を損傷して一ヶ月をすぎるともう大きな回復は望めない。草地さんもわらをも掴む思いで幹細胞の投与を行った。すると、間葉系幹細胞を投与した翌日驚くような変化が見られた。ほとんど動かせなかった指を折り曲げたり、肘を曲げることができるようになった。札幌医科大学の山下俊彦教授は、「これはもう我々にとっては驚き」「投与翌日のうちにそこまで回復したので」等と話した。幹細胞投与から投与から1週間後には支え歩きが可能になり、さらにその3週間後には、自力で立ち上がることが出来た。幹細胞投与から1ヶ月半後には自分の手で食事ができるようになった。

治療後の草地さんの運動機能の変化。これほどの回復はどのようにして起こったのか。間葉系幹細胞には3段階の働きがあることがわかってきた。まず第1段階では、弱った神経細胞の活性化をする。第2段階では3ヶ月の間に歩く能力を取り戻したが、この間に幹細胞はこわれた神経細胞の修復を始めていたと考えられる。第3段階では、新しい神経細胞へ変身して脳からの司令が強く伝わるようになったと研究チームは見ている。札幌医科大学の本望修教授は「従来は神経は1回やられると治らないいうことだったが、結果的にはわれわれがその方法を知らなかっただけで、それは可能なものだとわかったと思う」と語った。

事故から7ヶ月後、草地さんは退院の日を迎えた。皆に感謝の気持ちを伝えたいと得意だったピアノを弾いてみせると言い出した。札幌医科大学の森田智慶医師は「手の指の動きはなかなか脊髄損傷の患者さんでは戻ってきづらい、あっ、そんなこともできるようになってたの?という驚き」だと語った。

最も重傷な麻痺で臓器の機能も低下していた男性は、間葉系幹細胞も投与されて2ヶ月が過ぎた。顔色が良くなってきた。しかし物を飲み込む力だ戻らず栄養食を鼻からチューブでとっている。事故以来、男性はまだ1滴の水も飲めていない。まずは少量の水を飲むことを試してみた。水をのむことを境に、男性に確かな変化が起きた。失われていた感覚が次第に戻ってきた。整形外科の押切勉医師は、肛門の感覚が先週の終わりに少しでてきたので、という。肛門の神経は脊髄の最も下の部分につながっている。その感覚が戻ったということは脳とのつながりが脊髄全体に取り戻され始めた証。間葉系幹細胞の働きが第2段階に入り、壊れた神経細胞を修復し始めたと考えられる。病室に明るさが戻り始めてきたが、男性は声を出せない。もう一度、夫の声を聞きたい。

また季節が変わった。男性夫婦が待ちに待った日がやってきた。呼吸の力が強くなってきたため、首に開けられた呼吸器の穴を塞いで、声が出せるかどうか確かめることになった。声を出せるようになった男性は、奥さんに「苦労をかけた、一言や」「ええ人に巡り合ったよ わが人生」などと話した。

2017年4月。間葉系幹細胞を投与してから10ヶ月。回復し始めた男性は、札幌医科大学から自宅に近い病院に移ることになった。新たな治療の場は和歌山県立医科大学。転院した男性を尋ねると、両腕に合計6キロの重りを付けて腕を動かしていた。さらに支えられて歩くハードな訓練まで始めていた。これほどハードの訓練を行うのにはある狙いがあった。たった1回、間葉系幹細胞を投与された後着実に回復し続けていた男性。その回復は投与から半年たっても尚続いていた。第三段階の新しい神経細胞への変身している可能性がある。そこで神経細胞に強い刺激を与えれば、さらに回復を促せるかもしれないと期待した。期待通りにさらなる変化が起き始めた。転院時に右胸の横隔膜は全く動いておらず、呼吸が弱かったが、3ヶ月後には僅かだが確かに動き始めている。この調子なら自分の手で食事がとれるようになるかもしれない。田島文博教授は「いままでのリハビリテーションの常識とは違う何かが起きている」「そういう意味では画期的ですよね、本当に」などと語っていた。

今回治験を行った札幌医科大学は3年に渡る治験の結果をまとめた。治験を受けた患者は13人。間葉系幹細胞を投与した後、一人を除く全員で重症度が1段階以上回復した。残る一人も呼吸能力などの回復が見られた。問題となるような副作用は誰にも現れなかった。治験の成果を審査した結果、国は今回の再生医療を7年間の条件付きで承認した。ことし5月から健康保険適用の治療になった。札幌医科大学の塚本泰司理事長は、神経再生の治療を必要としている皆さんに新しい治療を提供できれば、等と話した。ニプロ 札幌再生医療センターで治療に使う幹細胞が大量に培養される。ただ、現状ではその数に限りがある。まずは2019年度は札幌医科大学のみで患者を受け入れる。ニプロ 箕浦公人再生医療事業部長は、これから多くの患者さんへの安定供給を考えると、まずは慎重に立ち上げていこうということでやっている、という。治療の対象は脊髄を損傷してから30日以内の重症患者に限られている。その治療の成果を見ながら、7年後に再び国が審査することになっている。研究チームは、脊髄損傷では、受傷から時間が経った慢性期の患者でも研究中で、さらに脳梗塞や認知症など他の病気の治療にも広げることを目指している。

2019年岡山。寝たきりから杖もなく歩けるまでに回復した草地さん。自宅に戻り一人で自立した生活を始めていた。脊髄を損傷するまでは塾の講師だった。パソコンが操作できるようになった今、インターネットを通じて数学を教える仕事に戻ろうとしている。

再生医療を受けてから2年2ヶ月。脊髄損傷の男性はついに三重県の自宅に戻ることが出来た。妻の手作りの雑煮で迎える、夫婦二人の正月。男性は、「恩返しのためにも、もし手が動きたら札幌いきたいね」と話した。この日、孫たちが遊びに来た。失われた人生を、もう一度取り戻す。令和の幕開けとともに、再生医療の新時代が始まった。

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