クローズアップ現代+ 100m 9秒台の世界へ〜日本選手初・桐生祥秀が語る〜

放送日 2017年9月11日(月) 22:00~22:25
放送局 NHK総合大阪

番組概要

オープニング (その他)
22:00~

一昨日、陸上男子100mで桐生祥秀が日本選手初の9秒台をマークした。高校生で10秒01を記録してからタイムは伸びず苦しい戦いも続いていた。そこで取り入れた体幹トレーニング、あるメダリストが指導していた。

キーワード
桐生祥秀

100m 9秒台の世界へ~日本選手初・桐生祥秀が語る~ (バラエティ/情報)
22:02~

日本の上位10人の平均タイムは年々上昇。ことし8月時点では10秒12と、世界での順位は65の国と地域の中で5位につけている。桐生選手と同じレースを走った多田修平選手は自己ベスト10秒07、世界トップレベルのスタートで次なる9秒台を狙っている。山縣亮太選手の自己ベスト10秒03は現役2番目のタイム。ケンブリッジ飛鳥選手は自己ベスト10秒08。18歳にしてことしの日本選手権を制したサニブラウン・アブデル・ハキーム選手は自己ベスト10秒05。9秒台まであと数10cmに迫る、史上かつて無い数の若きスプリンターが育っている。

桐生選手の故郷は彦根。小学時代はサッカーのゴールキーパーをしていたが、当時のコーチの峯さんは突出した足の速さを武器に広い守備範囲を誇った桐生少年の姿が目に焼き付いているという。中学では陸上部を選び、公園の坂でひたすら上り下りを繰り返した。高校3年の織田記念陸上、10秒01をマークし一躍有名となる。1歩の歩幅(ストライド)と足の回転数(ピッチ)を高いレベルで両立させていた。

翌年、鳴り物入りで大学に進学。9秒台に向けて体を鍛えるも、最初の2年間はけがが相次ぐ。3年の日本選手権のタイムは10秒31。レースの中盤以降体が反ってしまうのが課題となり、ストライドもピッチも悪くなっていた。そんな中指導を仰いだのはアテネ五輪ハンマー投げの金メダリスト室伏広治さん。体幹周りのトレーニング法を学び、上体を安定させようとした。

しかし、今年6月の日本選手権のタイムは10秒26。手にできると思った世界選手権100m代表の座も逃した。走る意味さえ見失いかけたというが、“ただがむしゃらに走ってみよう”と練習を再開。“走って楽しい”という自分の原点ともいえる感覚を取り戻した。そして迎えたおとといの日本学生対校選手権、左足に違和感があり出場するか迷ったことで逆にプレッシャーを感じずに済んだという。日本選手初の偉業を達成した。

為末大氏が現在の日本選手の底上げの要因について「彼らの世代は北京でのメダルを見ているからこそ世界での戦いが当たり前になっている、科学的根拠からなるコーチングも大きい」とコメント。また身体能力の影響が大きい陸上で記録を出したことは、日本人はフィジカルが弱い、というマインドセットを変える可能性につながる、とも話した。

桐生選手は身長1m76cm、体重70kg。陸上選手としては大柄ではない。10秒31に終わった去年の日本選手権と今回の記録とのデータを比較した。ピッチとストライドはどちらも向上。歩数も48.2歩から47.3歩へと減った。元プロ陸上選手の為末大さんは、後半に走りの乱れがなかったことで歩数が一歩分減ったのではないかと分析した。また、為末さんの注目は最高速度の出現地点。これまで桐生選手は一気にスピードを上げて後半に落ちることが多かったが、走りが洗練されたことで昨年に比べて10mほど後ろで最高速度が出ていると指摘した。

4年間期待され続けながらなかなか記録を更新できなかった桐生選手。為末さんは彼ぐらいのレベルになると参考がない。霧の中で前に進んでいるのか後ろに下がっているのかもわからないような状況の中、「桐生スタイル」を貫いたことが結果に繋がったとした。また、練習の結果が出るまでには1年程のタイムラグもあり、自分を信じるしかないという中でよく頑張ったなどとコメント。

日本初となる9秒台の記録が出たことで、日本人選手が国際大会での決勝のスタートラインに立つことも夢ではなくなった。先月行われた世界選手権決勝でのタイムでは、上位4人が9秒台。タイムだけでみれば今回の桐生選手はウサイン・ボルト選手に次いで4位に入ることとなる。為末大さんは陸上競技においては100mに一番能力の高い人間が集まっており、10秒の壁を破る以上にインパクトがあることをやるとすれば100mのメダルや世界一しかないとコメント。大きな意義は「選手らの次の目標が9秒台ではなく9秒98となったことで全体の底上げが図られること」と語った。

人類最速の舞台へ期待が高まる日本陸上界。そこには地道な取り組みがあった。日本選手が五輪男子100mで決勝に進出したのは85年前の吉岡隆徳ただ一人。一方、カール・ルイス選手の登場を期に世界の陸上界は高速化。9秒台が当たり前の時代へと突入した。危機感を抱いた日本は「日本スプリント学会」を結成し、世界最先端のトレーニング理論を取り入れようと動き始めた。2007年には全天候型のナショナルトレーニングセンターが完成。桐生選手もここでトレーニングを積んだ。併設する国立スポーツ科学センターでは最新機器によるフォームの解析も可能となった。その成果がでたのは北京五輪だ。北京五輪で初の銅メダルを獲得した。その後、競技人口が増えてレベルアップに繋がった。ジャスティン・ガトリンさんやウサイン・ボルトも日本人選手の9秒台を予感していた。そして日本学生対校選手権で桐生祥秀が9秒台を出した。

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