NHKスペシャル 東日本大震災「仮設6年は問いかける〜巨大災害に備えるために」

『NHKスペシャル』(エヌエイチケイスペシャル)は、NHKのドキュメンタリー番組。略称は「Nスペ」。単発のドキュメンタリーを制作・放送していたNHK特集に代わり、1989年4月2日放送開始。原則、毎週日曜日の21:00 - 21:50に放送するが時間枠を拡大したり他の曜日・時間に放送することもある。再放送は、火曜・水曜深夜。多くはハイビジョン放送である。本項では前身である『NHK特集』(エヌエイチケイとくしゅう)についても記述する。

出典:goo Wikipedia

放送日 2017年3月11日(土) 20:00~20:45
放送局 NHK総合大阪

番組概要

オープニング (その他)
20:00~

東日本大震災で建てられた5万3千戸の仮設住宅は家を失った11万人が急場をしのぐ仮住まいのはずだった。しかし6年もの間、狭いプレハブでの生活が続いている。住宅の再建を果たせないまま亡くなる人も相次いでいる。もはや仮の住まいとはいえない厳しい現実。深刻な事態の原因はどこにあるのか、私たちは被災地の40を超える自治体のトップや国の関係者を取材した。浮かび上がってきたのが法理の壁。70年前に制定され今も抜本的な見直しがされていない災害救助法。さらに今のまま巨大災害が起きると住まいを確保することさえままならないことが明らかになっていた。首都直下型地震では被災者の住宅が18万戸も足りなくなる。オープニング映像。

キーワード
東日本大震災
災害救助法

シリーズ東日本大震災 “仮設6年”は問いかける~巨大地震に備えるために~ (バラエティ/情報)
20:03~

有働由美子は、宮城・石巻市の被災地最大規模の仮設開成団地にやってきている。東日本大震災では被災した11万人を対象に国や自治体の予算で仮設住宅が建てられた。その後は災害公営住宅への入居や自宅を再建し復興を目指す。仮設住宅の入居期間は原則2年だが、復興の遅れに伴い延長が繰り返され今も3万5千人が仮設住宅での暮らしを余儀なくされている。まずは仮設住宅での暮らしの長期化がもたらす厳しい現実を見ていく。

宮城・石巻の仮設住宅ではこの1年の間に再建を果たせないまま4人が亡くなった。50~80代、中には働き盛りの人もいた。工藤妙子さんは震災で家を失い、夫婦で暮らしてきたが、去年夫が亡くなった。2年ほどで仮設住宅を出られると考えていた二人だが、暮らし始めて4年が経った頃、夫が口腔がんと診断された。復興工事の様子をよく眺めていた二人。夫は復興が遅いとよくつぶやいていたという。再建を果たせないまま、夫はなくなり妙子さんは「せめて仮設から出てから亡くなって欲しかった、悔やまれるし今でもそう思う」などと語った。NHKが取材した結果、少なくとも1700人が仮住まいのままなくなったことが明らかになった。

仮設住宅での暮らしが長期化している背景には、災害公営住宅や宅地の整備の遅れがある。復興にあたって最も重視されたのは、津波から命を守る安全な街を作ることだった。壊滅的な被害を受けた街を丸ごと作り変える大規模な事業で、作業員や建設資材が不足し、工事が遅れている。

長引く仮設住宅での暮らしは、再建への意欲にも影響を与えている。菊池政廣さんは、4畳半二間に妻の康子さんと二人暮らししている。自宅を再建したいと考えている菊池さんだが、土地の引き渡しは再三延期されている。自宅を建てる場所ではまだかさ上げ工事も始まっていない。今菊池さんは再建できるのか不安をいだいている。3年後の東京オリンピックでは競技場などの建設が急ピッチで進められている。菊池さんは「この復興は、われわれの盛り土やかさ上げは何年の何月までって決めたからそれまでにやるってわけじゃない」と不満を話す。仮設住宅での暮らしは厳しさを増している。冬になると結露が出来てカビが増えていくので朝夕2回の掃除が欠かせない。仮設住宅での暮らしに疲れたという菊池さんは再建に向かう気持ちさえ失いそうになるという。仮設住宅で暮らす被災者に行ったアンケートでは7人に1人は、住宅を再建するつもりはない、と答えた。長引く仮設住宅での暮らしで追い詰められる人たち。こうした事態に備えた住まいにできなかったのか。

そもそも、仮設住宅は被災者が避難所から一日も早く出れるように急いで作られる住宅で、費用は主に国が負担する。その根拠となっているのが、終戦直後に制定された災害救助法。災害が起きた後に国や自治体が行う応急的な救助について定められ、基本的な枠組みは今も変わっていない。繰り返されてきた、伊勢湾台風などの台風や津波による被害。この度にこの法律に基づきコストを抑えた仮設住宅が大量に提供されてきた。規定では居住期間は原則2年以内で、面積は29.7平方メートルで、長期間住むことを想定していない。42の自治体に災害救助法について聞き取り調査を行った。岩手・陸前高田市は「災害救助法はこんなに大きな災害を想定していない」、宮城・女川町は「仮設住宅を長期化に配慮した作りに出来なかった」などの回答が良さられ、復興を目指す上で法律が壁になったと答えた自治体は、60%にのぼった。

仮設住宅を広くしようとしたものの、できなかったのは宮城・女川町。今も1500人が仮設住宅で暮らしている。女川町の須田善明町長は、長期間住むことによって家族の生活に大きな影響を与えるのが広さの問題だと指摘する。家族4人の場合の間取りは、台所と浴室、そして4畳半の部屋が2つ。震災発生の2年後、須田町長は、災害救助法に基づく広さの規定を変えてほしいと国会で訴えた。しかし議論は進めず見直しには繋がらなかった。岩手・宮古市で仮設住宅の整備を担当した滝澤肇総務部長は、2年の想定ではなく20年ほど暮らせる半恒久的な住宅を検討した。プレハブより丈夫な建物を作り、再建の際に安く提供することでそのまま暮らしてもらおうと考えた。しかし災害救助法が壁となり従来のプレハブの仮設しか作ることができなかったという。聞き取り調査では、部屋の広さは62%、居住期間2年については74%が適切ではないと答えた。仙台市の奥山恵美子市長は70年前に制定された災害救助法を今こそ変えるべきだと指摘している。有働アナは、災害救助法では大規模災害に対応できていないと言う声が被災地から相次いでいると紹介。NEXT 見直しのチャンスがあったのに…。

1995年の阪神・淡路大震災では約4万8千世帯が仮設住宅で暮らし、最も長い人は5年に及んだ。孤立する人や体調を崩して亡くなる人が相次いだ。こうした事態を受けて、当時災害救助法を所管していた厚生労働省が研究会を立ち上げた。研究会では専門家からこの法律を根本から見直すべきだという意見が出たという。仮設住宅に入るまでしか想定していない法律を見直し、再建まで一体的に対応して復興につなげるべきだという意見だった。しかし法律が見直されることはなかった。元厚生省の災害救助法担当の河原勝洋さんは、省庁の縦割りが壁になったという。当時、応急的な救助は厚生省、その後の再建支援は国土庁が受け持っていて、他の省庁の管轄に踏み込まないことが暗黙の了解だったと河原さんが振り返る。結局研究会の提言は生かされなかった。「生活再建のめどが立っていかないことを考えると反省すべき点であり悔やむ点でもある」と述べた。東日本大震災の後、内閣府が応急救助と再建支援の療法を受け持つようになったが精度の抜本的な見直しは行われていない。

内閣府で、国は今制度の見直しについてどう考えているのかを、有働アナが中村裕一郎参事官に問う。「どうにかしてほしいというはご意見としては出てくると思うが、現行法の枠の中でもたぶん色々工夫できることが恐らくあるだろうと思っている」とした。有働は、阪神淡路大震災で5年、東日本大震災で6年の仮設住宅暮らしがあり、そもそも2年がどうなのかということについて質問すると、「特に被害が大きい災害については、1年ずつではあるが延ばしていける枠組みがあるので、それを必要に応じて活用していくというのが今のところの考え方」だとし、内閣府は今のところ2年という原則を見直す事は考えていないとしている。入居期間を長く設定すると、再建への意欲を失うこともあると説明する。

取材に当たった中島俊樹記者は、内閣府の担当者が長期間住めるようにするとかえって復興の妨げになると言っていたことについて、国の考え方が現実にあっていない、と指摘する。仮設住宅をいち早く提供するのが国の基本的な考え方で、そのために急場凌ぎの簡素な作りにならざるをえない、となっているが、大規模災害では復興工事が遅れ、被災者が仮設から出たくても出られないというのが現実だと説明する。NEXT 首都直下型地震で大変な事態に。

今の災害救助法で首都直下型地震に対応できるのかについて、先月、内閣府で検討された。その中で国は、首都直下型地震で必要となる仮設住宅の数を試算した。マグニチュード7.3の大地震で最大震度が7の場合、避難者は最大330万人と想定され、必要な仮設住宅は57万戸が必要になるとしている。しかし、都内では最大でも8万戸しか建てられない。そこで国が活用しようとしているのが賃貸住宅。災害救助法ではプレハブ仮設の代わりに提供が認められている。都内で空いている賃貸住宅は49万戸で国はプレハブと合わせて多くの住まいを確保できるとしている。しかし。専修大学でNHKが専門家とともに検証すると国の試算通りにいかないことがわかってきた。すると今のままでは被災者に提供する賃貸住宅が大幅に不足することがわかった。災害救助法では自治体から提供される賃貸住宅はプレハブ仮設と同等のものと決められており、家賃に上限が設けられて、この条件でシミュレーションすると、自治体が提供できる賃貸住宅は大幅にヘリ、18万戸も足りなくなることがわかった。

東京・足立区の足立区長門南部町会で、この結果を聞いてみた。足立区ではプレハブ仮設の建設予定地は15箇所で1700戸しか建設できず、賃貸住宅の家賃の上限を考慮するうと、全体で3万9千戸足りないという結果になった。

さらに災害救助法には賃貸住宅の活用を阻むもう一つの壁がある。久道透さんは、小学生と高校生の子供二人と妻の4人で暮らしている。4人家族の暮らしを考え確保したい物件は2LDK、平均15万円。しかし災害救助法のもとでは家賃の上限は7万5千円。この条件の物件の75%がワンルームに当たる。久道さんは、この7万5千円に自己負担を上乗せして広い部屋に住みたいと考えたが今の災害救助法では家賃に上乗せして物件を借りることが出来ない。賃貸住宅に住みながら再建を目指そうと考えていたが、災害救助法の壁が立ちはだかることになる。住民たちからはそれぞれの生活にあった制度にしてほしいという意見が相次いだ。内閣府の中村裕一郎参事官に、次の震災も現行の災害救助法でやっていくかを問うと「今の東日本大震災で供給している(仮設)住宅が済んだあとに次の大きな見直しがあるとすれば、その段階ということにはなってしまう」とかたった。再建まで見据えた一体的な制度に変えられないのかについては、「今後に向けてそういうものも一つの検討課題になるとは思う」と答えるにとどまった。

中島俊樹は、仮設住宅が解消してからというスピードでは次の災害には間に合わないと思うといい、どのように制度を変えていけばいいのか、専門家に話を聞いた。日本災害復興学会の室崎益輝特別顧問は「全体の救助から復興行政を一体でやるようなシステムがいる」「今の制度ではうまくいかないということをみんなが今納得している時」「やはり今みんなが新しい制度が必要だと思うときに手を付けないといけない」などと指摘する。岩手・住田町の仮設住宅はある程度長く快適に住めるように木造にした。当初災害救助法では認められず、町独自の予算で建設したという。費用はプレハブと同程度で、移築して生活を継続できる。熊本地震の被災地では、東日本大震災の教訓から被災者のニーズに合わせた住まいを提供しようと高齢者や障害者に聞き取りを行った。一部の世帯にはバリアフリーの公営住宅を提供した。熊本市の田中隆臣技監は「要援護者について、いろいろな状況や収入要件を聞いて2年後の再建がデキやすいようにやった」「全ての被災者にできれば多分理想何だと思う、ただそこは非常に難しい」とコメントした。中島俊樹は被災者の復興を最初から見すえていくこと、復興できるまで支援を継続することが重要だと語った。

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熊本市
厚生省

エンディング (その他)
20:44~

有働キャスターは、忘れてはならないのは今なお35000人の人が東北の仮設住宅で厳しい生活を余儀なくされていて、今こそ国の制度を抜本的に見直すときではないか、と問いかけた。

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災害救助法
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